near2図書館

near2図書館 館長こと、にゃんちー。私の読書感想文と、頭の中の本をご紹介。日々の徒然(凸凹日誌)

微かな音が鮮明に聴こえてくる絵本

f:id:ch-k-julius:20181230153808p:plain

 

こんばんは。にゃんちーです。

今宵も寒い。

もう冬の足音が聴こえてきますね。

鍋料理がおいしい季節になってきました。胃が温かくなると、ほっとするよね。

 

 

さて、今日の1冊。

 

『金曜日の砂糖ちゃん』 酒井駒子 偕成社

 

www.kaiseisha.co.jp

 

 

とても薄い絵本です。そして3つの作品がおさめられています。

どれも素敵なタイトルです。

・金曜日の砂糖ちゃん

・草のオルガン

・夜と夜のあいだに

 

 

言葉の息づかい

どの作品にも言えますが、詩的な文章です。

子供向け用の明確なメッセージ性と、起承転結のあるストーリー性をもった作品ではないです。子供でも楽しめる絵本、といったことろでしょうか。

 

どの作品も好きなのですが、2つ目の「草のオルガン」という作品がとりわけ大好きです。

 

今日は ぼくは さみしいことが あったから

つまらないことが あったから

知らない道を とおって 帰る 

 

素敵な、でもちょっと影のある始まり方です。

ランドセルをしょっている男の子の帰り道。そのぼくが主人公です。

知らない道をとおって帰ると、野原にでます。

 

おやおや こんなところがあったとは

 

野原をずんずん歩いていくと、1台のオルガンが。

こんなところがあったとは

 

草のなかの オルガンは 音が いっこも  でなかったけど

 

ぼくがオルガンを弾いていたら、バッタがやってきます。

蝶も。

カラスはたんぽぽを咥えてやってきました。

最後は工事現場の大人に注意されて帰ります。蛇が出るから危ないよといわれて。

ぼくは ヘビにも あいたかったと おもいました。

 

ぼくが話しているというよりも、心のこえが文字として書かれている気がします。

ぼくの小さな足音とか、ため息とか。

バッタが来た時の、カサっていう小さな足音とか。

音がなかったけれど、鍵盤を押さえた時の軋む音とか。

そこかしこにある、微かな息づかいが絵本の文章から感じとられます。

 

 

酒井駒子の絵の世界

私は酒井駒子の絵が大好きです。可愛らしさと哀愁が共存しています。

 

黒の使い方と筆のタッチが特徴的です。

わざと塗り残したのかと思うような、黒のかすれ方。ざらついた感覚を持ちます。

一方でべた塗されてのっぺりと、奥行きのないところ。

か細く、必要最小限の線描。

ザッザッという粗く見える筆使いと、繊細な線。大雑把に見えて実はとてもシンプルに、とても繊細に描かれています。

色の置き方だけで、質感の違いや物の凹凸を感じさせるのですから、すごいです。

酒井駒子は人物の本当にわずかな表情の変化を捉えています。

こればかりは、酒井駒子の観察力と画力に感服してしまいます。

本当に一瞬の、ふとした表情を切り取って描くのがとても上手だと思っています。

その観察眼と、筆の勢いにから、そこに描かれているものが発する微かな音が、鮮明に聴こえてくるといつも感じます。

雑音がないのです。

まるで冬の夜明け前みたいな、しんとした空気の中で、でも確かに日が昇ってくる気配を感じるような、そんな空気感のある絵です。

 

 

最後に

読書というには物足りないかもしれません。

でも不思議と、酒井駒子の絵の世界が、ほんのちょっとだけファンタジックなところへ連れ出してくれます。幻想的なのだけれど、そんなに浮世離れしていない。

それがなんとも心地よいのです。

そおっと隣に寄り添ってくれる。

静かに、そして暖かく。毛布をそおっとかけてもらったかのような気分になるのです。

 

 

今日のところはこの辺で。

酒井駒子については、もっと書きたいにゃー。探しとこ。

またにゃん。